親になるということ

人はある日突然親になる

子どもの目から見ると親はずっと親です。でも、親の目から見れば「ある日突然親になった」のですよね。

母親の場合はお腹に子どもができた時から生まれるまでの数ヶ月の間、体も心も準備が進んでいきます。けれども父親の方は、文字通り「生まれた瞬間に始めて親の自覚が生まれ始める」といったところではないでしょうか?

そんなわけで、実際に親になっても親としての心構えも知識も体験もないのが普通です。

かつての親は孤独になれなかった

100年くらい前まで、家の中に親と子どもだけしかいないことは、この日本ではほとんどありませんでした。三世代が同居するのが普通だったからです。

親の兄弟も一緒に住んでいることもありました。一緒に住んでいなくても、歩いて数分で親の兄弟の家がいくつもあるものでした。

また子どもも多く、長男と末っ子では親子ほども年が違うことも珍しくはありませんでした。

だからいきなり親になっても自分ごとで相談に乗ってくれる人が何人もいたわけです。

それは同時に親以上に子どもに介入する大人がたくさんいたということでもあります。船頭多くして船山に上るといった事態もあったでしょう。

それでも今のように核家族の親が孤立して困り果てることは少なかったでしょう。

虐待もあったでしょうが、今のように暴走することは少なかったかもしれません。ブレーキ役がたくさんいたでしょうから。

現代の親は孤独な存在だ

ところが21世紀になって20年近くなった今日、ほとんどの子どもは核家族の中で育っています。祖父母との同居は珍しく、親の兄弟姉妹も東京と大阪くらい距離が離れていることも珍しくありません。そもそも一人っ子も増えています。

そして親は、親としてはもちろん、家族としても新米です。

夫と妻の育った家族の文化の違いは、予想よりはるかに大きいものです。夫婦間のギャップに戸惑って、どうしようと悩んでいるうちに親になってしまうこともあるでしょう。いや、ほとんどの親がそうでしょう。

そんなわけで、親になる前から悩んでいる親が、さらに親子関係で悩むことになります。

育メンが増えたとはいえ、子育ての大半は母親の肩にのしかかります。孤独な母親には、育児書などの本はもちろんインターネット経由で膨大な情報流れ込んできます。

ところがそういう情報は「一般的な親の問題」をもとにして体系化されているものです。個別具体的な問題が大半である夫婦間、親子間の問題の解決にはほとんど役に立ちません。

その改善のために、かつてはなかった児童相談所などの施設もどんどん増えてきてはいます。しかし、人も予算も全然足りません。恩恵を受ける家族はごくごくわずかです。逆に介入によって混乱する家庭もあるでしょう。

少々の失敗は大丈夫なのです

おまけに子どもは親が育った環境とはまったく違う条件で育っているのです。親の世代が子どもだった頃には、スマホもネットも身近なものではありませんでした。

しかし、もう間も無く学校でも一人一台のタブレットが当たり前になるでしょう。小学校でも英語教育もプログラム教育も始まります。大学入試の仕組みも変わり、終身雇用制度もなくなり始めています。

親から見て子どもが宇宙人のように理解不能なのが当たり前のことなのです。

そん中で正しい子育てができると思う方が不思議なのではないでしょうか?

少々失敗しても子どもは死にはしない

といった心持ちで、少しずつ自分の未熟さに気がつき工夫をしていくくらいの覚悟で、親はちょうどいいのではないかとは思うのです。