スラスラと正確に計算できる力
頭の回転を速くし、短期記憶と切り替える力を鍛える
基礎的な四則計算(たす・ひく・かける・わる)は、算数・数学の言葉です。言葉が話せなければ会話ができないように、計算ができなければ、算数・数学はできません。
あなたも、何か話したいことがあれば、何も考えずに話し出せますよね? 算数・数学の基礎的な計算は、話すように考えずにできなければなりません。
あれこれ考えて、指折り数えて、ようやく答えにたどり着けるといった計算力で数学を勉強するというのは、英語が話せないのにアメリカの学校で学ぶのと同じくらい無茶な話なのです。
では「話すように計算できる」というのは、どのレベルのことでしょう?
それを私は「スラスラと正確に計算できる」と言っています。
ある程度の問題数の計算を、一定の時間内に、ほとんどミスができない計算力が必要なのです。
そのために必要な力は
- ある程度の頭の回転の速さ
- ある程度の短期記憶力
- ある程度の切り替える力
の三つです。
頭の回転の速さは上げられる
スマホやパソコンは、作られた時からCPU(中央処理装置=コンピュータが計算をする場所)の力が変わることがありません。能力が足りなければスマホやパソコンごと変える必要があります。
最新のアプリは、古いスマホやパソコンでは動きません。
でも人間の脳は機械ではなく生き物です。脳の神経回路の仕組みは全部わかってはいませんが、歳を取っても成長することは科学的にも証明されています。
脳をつけかえなくても、頭の回転の速さを上げることはできるのです。
ではどうすれば頭の回転の速さが上がるのか? それはスポーツや音楽と同じで、練習すればいいののです。自分の実力より少し上の課題に挑戦し続けることです。
計算でも、練習すればするほど、その速さを上げることができます。どんな年齢であっても、練習に応じて力がついていきます。
短期記憶力
繰り上がりや繰り下がりの計算などでは、短期記憶力が求められます。たし算・ひき算では増えるときも減る時も1ですが、かけ算になるといろいろな数が繰り上がります。割り算になると、暗算で予想しないと答が見つからないこともあります。
たいていの人間の脳は、関係のあることのカタマリを意味付けて覚えるのは得意ですが、脈絡のない数字を覚えるのは苦手です。電話番号でも、よく使う番号以外はなかなか覚えられませんよね。
でも短い時間であれば、4繰り上がったとか、7だったとか覚えることならなんとかできます。そういう記憶力のことを短期記憶力と言います。
この力も練習すれば上げることができます。反対に練習しないと衰えていきます。
何をしていても、電話がかかってきたり、人が訪ねてきたりして邪魔が入ることがありますよね。突然の飛び込みをなんとかしたら、元に戻るときに
えっと、なにしていたんだっけ?
となることがありませんか?
短期記憶力を鍛えていると、すぐに元の仕事にもどりやすくなります。
切り替える力
整数の計算の頂点は2〜3桁の数で割るわり算です。その手順は次のようなものです。
- 最初の答えの見当をつける
- 見当した答えと割る数のかけ算を暗算する
- ひき算できるかどうか確かめる
- かけ算の答えを書く
- ひき算の答えを書く
- 次の答えの見当をつける
- 2に戻る
これを最後まで繰り返します。
かけ算するときにはたし算が滑りこむので、わり算の筆算をするときは、たす・ひく・かける・わるのすべてを入れ替え差し替え繰り返しすることになります。
いくつもの道具をルールに従って切り替えて実行する力です。
以上のような力を総合して、はじめてスラスラと正確に「言葉を話すように」計算できるようになるのです。